一般的に日常の中で、普通の人が感情的になる場面というのは、そうはないのではないでしょうか。例えば、注意をする時に少しムキになってしまったり、また自尊心を傷つけられた時に少し感情的になることはあるかも知れません。しかし、感情をむき出しにして暴力まで振るうという事態までは考えづらいと思います。ところが、認知症高齢者が感情的になる場合は、言葉が乱暴になって大声を上げたり、さらには暴力的になることも時にはあります。きっかけは些細なことでも相手の態度や言葉次第でどんどんエスカレートしてしまいます。そうなった場合、理由を明確に説明できる人は少なく、その理由も曖昧で抽象的だったりするようです。
同居する要介護の家族への接し方~認知症高齢者の感情の変化へは理解を
要介護者である認知症高齢者の介護をする際に、家族が一番苦しむのは感情の変化への対応ではないでしょうか。要介護者が高齢者の場合、感情が表に出やすく、時にその表現が激しくなってしまうことは珍しくありません。こうしたケースにおいて、少し誤った接し方をしてしまう場合が少なくないようです。ここでは、感情的に成りがちな要介護者への接し方について解説します。
感情の変化の原因の多くは理由不明
難しい感情のコントロール
認知症の人が怒りっぽくなるのは、感情抑制ができなくなるからです。自分が思うようにできないことで、自分自身に腹を立てて感情を抑えられなくなってしまうからです。さっきまで笑顔で話していたと思ったら、突然、険しい表情になりイライラした表情に変わる。そのような感情の変化の源には、認知機能障害があります。適切な判断力が欠けてしまい、状況への適応ができないのです。他人の笑い声でさえ、時には自分を笑っているかのように思い込んでしまい感情が乱れてしまうことになります。
まず本人の言葉に耳を傾けることが大切
よくあるのが感情的になった本人に対して、家族の方が本人の思い込みだからと否定したり、その考えを訂正しようとします。ここで、まず家族や介護士が最初にやるべきことは、本人の言葉に耳を傾けることです。決して本人の怒りの理由を探ろうとしないこと。特に、「どうして怒っているのか?」などの質問は禁句です。例え聞いたとしても、その質問に答えられないことにまた腹を立てて、怒りが増幅してしまうからです。怒りへの対応としては、本人の不安や心配、失望などの感情に共感することが最も重要なことだと考えられます。まずは本人の言葉を黙って聞いて、頷いてあげることが大切です。
自尊心を傷つけるような言葉には要注意
認知症の人は認知症とは思っていなくても、少なくとも自分の能力低下を自覚しています。そのため、のけ者や腫れ物扱いされるような行為には過敏に反応してしまいます。どこかに行く際に、つい何度も「大丈夫よね?」という言葉を繰り返せば、普通の人でも「うるさいなー、大丈夫だよ」と言いたくなります。もし自分の能力低下を気にしている人に同じことを言えば、自尊心が傷つき、感情的になることは十分考えられます。
気軽に相談できる「介護者の会」
認知症の親を持つ家族が気軽に話せる場として、同じような境遇の人が集う「介護者の会」が全国にあります。専門家ではなく同じような状況をかかえた一般の人たちの会です。介護者の会には、既に親が施設に入所して自宅での介護をしていない人もいますが、その経験からくる言葉やアドバイスは大きな力になります。介護者の会については、インターネットや最寄りの市役所、社会福祉協議会などで情報を得られますので参考にしてください。
まとめ
認知症高齢者の親と同居しながら介護をするケースは、今後益々増えていくと思います。本人が感情的になっている時には、否定したりせずにできるだけ耳を傾けることが大切です。本人にもどうしようもない感情の変化を理解すれば、言い方次第でその感情が収まることもあります。家族として共感しながら、寄り添う気持ちが大切なのではないでしょうか。