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2022/02/13
住まい

住む人に優しいスロープは、住宅の機能性も高める

歩行を補助するスロープは、駅やショッピングモールなどの公共施設の出入り口などに設置されるケースが多く、一般住宅ではそれほど多くはありません。ただ最近では、高齢者や車椅子利用者のために、二世帯住宅や改修・改築時に設置する住宅も増えています。今回は、住宅用スロープのメリット、さらに高齢者用のバリアフリーとしてだけではなく、住宅設備としてのスロープの機能的価値などについて解説していきます。

住む人に優しいスロープは、住宅の機能性も高める

スロープを必要とする住宅

高齢化社会を迎えている日本では、公共スペースにおいてはスロープをはじめとするバリアフリー設計が当たり前になっています。一般住宅でもスロープを必要とする高齢者や介護を必要とする家族がいる場合があります。また、加齢により足の筋力が弱っている人、病気やケガで足腰が不自由な人は、階段や玄関の框(かまち)の段差につまずいたり、車椅子では先に進めなかったりと、不自由さを感じる場面が少なくありません。そんな時にスロープがあれば、ストレスなく安全に移動することができるのです。

スロープを設置する際の3つのポイント

スロープを設置する際に、気をつけるポイントには3点あります。それは「勾配」「幅」「素材」です。勾配は傾斜の角度、幅はスロープ自体の横幅、そしてスロープを作る素材です。勾配や幅は、国が定めるバリアフリー法の建築物移動等円滑化誘導基準に則って設計する必要があります。

 

勾配の基準

特に、スロープの勾配には注意が必要です。勾配とはスロープの傾斜の程度のことを言います。当然、勾配が大きいと車椅子などでの昇り降りが大変となり、逆に緩やかな勾配にすると、スロープが長くなってしまいます。基本的に高齢者や車椅子利用者が安全・円滑に移動できる勾配は、1/12以内と定められています。これは1㎝の高さに対して12㎝の長さのある傾斜を意味します。

 

スロープに必要な幅

幅も重要なポイントです。特に車椅子を利用する場合はなおさらです。基本的に公共施設では人とすれ違う幅を考慮して、横幅130㎝以上と定められていますが、一般住宅の場合には100㎝程度あれば安全とされています。その場合も手すりを設置する場合を考えて、余裕を持った設計をする必要があります。

 

素材を選ぶポイント

スロープの素材として重要なポイントは、安全性にあるといえます。屋外の場合は、水はけが良くて雨の日でも滑りにくいこと、斜面が見やすい色合いや形であることが重要となります。また夜間にはフットライトを設置して足元を明るくすることで、より安全性が高まります。

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屋内におけるスロープ設置

スロープの設置は玄関周りだけとは限りません。同時に考えたいのが室内用スロープです。ドアの敷居にある段差や建具の枠による段差、また和室とフローリングの敷居、トイレや浴室の敷居、そして玄関の上がり框(かまち)や勝手口の段差、さらにはバルコニーの段差や縁側やウッドデッキの段差など、意外にも室内には段差が結構あるものです。設計の段階からそれらの段差を想定して、スロープの設置を検討することが必要です。

スロープ設置のメリット

スロープの設置は、バリアフリーの観点からは高齢者や車椅子利用者、そして子どもの転倒防止等に有効です。その他に、スロープを中心とした住宅のバリアフリー化は、それ自体が住宅の利便性を向上させ、住宅の資産価値を高めることになります。高齢者や車椅子を利用する人だけでなく、居住者にとっても機能性が高まるため、住みやすく優しい住宅となるのです。スロープは、高齢化社会の住宅設備としてスタンダードとなるかもしれません。

スロープ設置には十分なスペースが必要

スロープを設置する場合は、十分なスペースが必要になります。段差の高低差があればあるほどスロープは長くなり、その分のスペースが必要となります。一般的には10cmの段差の場合、傾斜角度5度のスロープの長さは120cmとなります。もしも玄関前の敷地が狭くて設置が難しい時は、玄関は階段のままにし、玄関脇にスロープを設置する2WAY式にするか、または玄関ではなくウッドデッキや縁側、勝手口にスロープを設ける方法もあります。

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まとめ

住宅にスロープを設置することは、高齢者や車椅子を利用する人だけでなく、居住者にとっても優しく、利便性の高い住宅となります。設置する場合は、屋外では水はけが良く、滑りにくい素材選びも重要となります。屋内の場合は、移動しやすい傾斜角度にする必要があります。住宅展示場では、バリアフリーに対応したモデルハウスも見学することができるので、実際に玄関周りや室内などを体験してみることをオススメします。