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2022/04/17
住まい
#屋根 #勾配

建てる前に知っておきたい屋根選びのポイント

住宅を構成する部材の中で、家の印象を表すものの一つに屋根があります。屋根は建物の上部を覆い、雨や雪、日射、熱暑寒冷から屋内や外壁などの構造部分を保護し、快適な住環境を保つ上では重要な部材といえます。その機能性や耐久性は、形状によっても違いがあり、また、色やデザインによっては住宅の印象を変えてしまいます。今回は、家を建てる際の屋根選びについて解説します。

建てる前に知っておきたい屋根選びのポイント

日本の屋根の形状

屋根には様々な形状があります。日本の伝統的な屋根としては、中世以降格式のある建築物に採用されている「入母屋屋根(いりもややね)」や西日本で広まった「切妻屋根(きりづまやね)」、東日本で広まった「寄棟屋根(よせむねやね)」があります。中でも構造がシンプルな「切妻屋根」は、日本瓦だけではなくスレートやトタンなどの素材にも合うため、様々な建物に応用でき、現在の住宅で採用されるポピュラーな形状といえます。

屋根選びのポイント

屋根を選ぶ際のポイントは何か。屋根は、見栄えはもちろんですが、施工やメンテナンスに掛かる費用、設置する方角、地域の特性など様々な点を考慮して検討する必要があります。中でも基本は、雨漏りしない施工(雨仕舞い)と、その後のメンテナンス費用です。複雑な形状であればあるほど雨漏りを引き起こす可能性が大きくなり、かつ施工費が高くなり、そしてメンテナンスも難しくなってきます。雨仕舞い(あまじまい)とは、雨漏りさせないための防水と排水のことですが、壁や他の屋根との継ぎ目に雨が入り込まないようにすることが求められます。

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日本の四季に合った軒の役割

軒は、夏の厳しい陽射しを遮り、冬の日光を室内まで届ける重要な役割を持ちます。同時に、外壁に風雨が直接降り注ぐことを防ぐ機能も持ちます。軒が深い住宅は高級感があるといわれますが、バルコニーや庭、エントランスとの関係に合わせて設置します。軒が浅い住宅の場合は、風雨を防ぐ機能が弱く、軒先と外壁の接合部から雨漏りを引き起こすリスクが高くなる点には注意しましょう。

地域の特性に合わせた屋根勾配

屋根の機能を左右する重要なポイントに、屋根の勾配(傾斜角)があります。屋根の勾配が急だと住宅の高さが高くなり、軒は低くなるため、設計上居室空間が取りづらくなります。反対に勾配が緩すぎると雨水が流れにくくなり、雨仕舞いがうまく行かなくなります。また地域によっても変わってきます。例えば、冬場に雪が積もる地域では、屋根に積もった雪が自然に落ちる形状が良いため、「切妻屋根」や「片流れ屋根」のような大きな勾配のある屋根が適しています。ただ、家の周囲に雪を落とすスペースがない場合は、屋根から雪が落ちないようにして、かつ雪の重量に耐えられる「バタフライ形屋根」や「陸屋根」といった形状にすることがあります。

 

夏の対策としての屋根勾配

夏場の家の暑さ対策として、特に最上階の空間の暑さを緩和するために、大きな勾配の屋根を採用することがあります。また海沿いの住宅や台風が通過する地域では、屋根勾配を緩やかにして海風の抵抗を最小限にする工夫をしている住宅もあります。沖縄などでは、傾斜がほぼゼロに近い「切り妻屋根」や「陸屋根」がよく採用されています。

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エコ住宅における屋根事情

近年は、国のエコ住宅建設の後押しもあり、屋根に太陽光パネルを設置する住宅が増えていますが、そのため傾斜を南側に向けた「片流れ屋根」が比較的よく採用されるようになっています。「片流れ屋根」の場合は屋根裏スペースが生まれるため、屋根を住宅機能の一つとして考えた設計施工がされるようになってきました。また、屋根自体に採光や風通しの役割を持たせるため、「越屋根(こしやね)」や「招き屋根」といった個性的な形状も近年よく選ばれるようになっています。


まとめ

快適な住環境を保つ上で重要な屋根は、その機能性や耐久性によって様々なデザインや形状があります。また、色やデザインによっても住宅の印象は変わるため、屋根を選ぶ際には形状や特長を知っておくことが大切です。何よりも雨漏りしない屋根が最も重要です。