TOPICS
トピックス
2022/04/24
暮らし
#生活習慣 #認知症

認知症に関わる12のリスク要因
生活習慣を改善して認知症予防

認知症は誰でもかかる病気といわれるほど、多くの人が発症している病ですが、その原因については世間一般にあまり知られていませんでした。2017年、世界的に著名な英国の医学誌に、その原因として9つのリスク要因が掲載されました。そして、2020年にさらに3つの項目を追加して、計12のリスク要因を選定しています。今回は、そのリスク要因と認知症予防についてご紹介します。

認知症に関わる12のリスク要因<br />
生活習慣を改善して認知症予防

世界五大医学雑誌の一つである英国の「ランセット/Lancet」の認知症予防・介入・ケアに関する国際委員会は、9つの生活習慣が認知症の発症要因の35%を占めることを突き止め、同誌電子版に論文を発表しました。その後、2020年7月に当時エビデンス(科学的根拠)不足であった「過度の飲酒」、「頭部外傷」、「大気汚染」の3つを加えて再発表しています。

認知症を発症する12のリスク要因

認知症を発症する要因として、若年期の早期教育の不足、中年期以降の高血圧、肥満、高齢期の難聴、喫煙、うつ病、運動不足、社会的な孤立、糖尿病、さらに過度の飲酒、頭部損傷、大気汚染という12の要素をリスク要因として認定しています。論文によると、若い頃から認知症の早期教育を強化し、中年期の難聴、高血圧、肥満を改善することで、認知症の発症率が20%低下すると報じられています。さらに、高齢期では喫煙を止め、うつ病を治療し、運動や社会的な交流を増し、糖尿病を抑えることで、認知症の発生率を15%低下させることが可能としています。そして、2020年に付け加えられた3つの要因を改善すると、認知症の発症を約40%予防する効果が期待できるといいます。

若年期に生活習慣や認知症の教育

教育というのは、どんな生活習慣が認知症を含めて健康に良いのかを知り、健康的な行動につなげていこうというものです。糖尿病や高血圧、肥満、喫煙、飲酒といった生活習慣(病)は認知症の原因にもなります。一方、認知症は発症の10年以上も前から少しずつ蓄積したアミノ酸が原因ともいわれており、若い時期からの生活習慣を改善していくことで、認知症の抑制につながるものと考えられます。

高血圧が脳血管性認知症の原因に

認知症はアルツハイマー型と脳血管性型が大部分を占めていますが、脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などにより脳の血管が損傷することで発症します。糖尿病や高脂血症、高血圧といった生活習慣病を持つ人は特に注意が必要といえるでしょう。

肥満は認知症や多くの病気の原因に

肥満は、認知症でなくても認知機能が少し低下します。肥満は前頭葉の萎縮に関連し、特に前頭前野での萎縮が見られます。中年から高齢期には、頭頂葉、側頭葉の萎縮にも影響を及ぼします。脳の機能として、前頭葉は人格・社会性・言語を、側頭葉は記憶・聴覚・言語をつかさどっています。また、肥満は脳血管に関連し、脳血管性認知症への影響も見過ごせません。

⑩-2AdobeStock_110049277.jpeg

難聴は社会を避けて孤立するおそれ

難聴の方は聴力が正常な方と比べると、認知症になるリスクが2倍ほど高くなるといわれています。難聴になると、人と交わることを避け、自然と孤独な生活を送るようになる可能性があります。孤独については後述していますが、人や地域との交流が少なくなると、それが影響して認知症を発症することがあります。

喫煙は血管や脳を痛め認知症を誘発

喫煙は血管を痛め、脳への酸素供給も減ってしまうことから認知症を発症しやすくさせると考えられています。また、タバコ病ともいわれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)、2型糖尿病、脳卒中、高血圧、心房細動などは、認知症の発症と関係している病気とされています。

⑩-3AdobeStock_60026192.jpeg

孤独と感じる人は認知症リスクが高い

認知症に関わる生活習慣の一つである社会的孤立は、一人暮らしそのものではなく「孤独と感じること」が認知症のリスクになるということです。2012年、オランダのグループが2千人余りの人を対象に行った調査によると、一人暮らしをしていた人が家族や隣人などと交流せず、孤独を感じていると答えた人は約20%。そして3年後、孤独を感じていた人は、そうでない人に比べて認知症の発症確率が約2.5倍に達しました。孤独を感じていた人の13.4%が認知症になったとも報じています。

参考:https://medical-tribune.co.jp/kenko100/articles/121214525640/

 

医師で認知症の患者を多く診察しているフレディ松川先生によると、過度の頑張り屋、孤独を愛する人、長いものに巻かれる(我慢する)人は、認知症になりやすいということです。孤独を愛する人は、周りのコミュニティに溶け込めず、知人との交流も途絶え、家の中に閉じこもりがちとなります。そうした生活は変化が少なく、脳への刺激も減少して認知症を誘発するものと考えられます。


まとめ

認知症の多くは発症する10年以上も前から、原因となる物質(アミノ酸等)が脳に蓄積されて、高齢になって少しずつ認知症状が現れます。こうした下地がつくられる中年期やそれ以前に生活習慣を改善していくことが、認知症予防につながることを理解しておきましょう。認知症は治らない病というのは、病が進んでしまった場合であり、発症の早期であれば改善可能な病でもあります。発症しても生活習慣を見直し、実践していけば進行を食い止め、それほど多くの介護を必要とせずに生活していくことも不可能ではないのです。