従来、70歳以上の方の運転免許更新時には講習を受けることになっていました。講習は一般講習のほかに、教習所においてSコース、クランクコース、一時停止、方向変換、進路変更などの実技の講習も行われていましたが、これはあくまでも講習であって試験ではありませんでした。それに対し、今年5月から導入されるのは、合否判定が下される「試験」となります。不合格になれば免許証の更新はできません。ただし、この実車試験は75歳以上で一定の交通違反歴がある人だけに義務づけられています。また、免許証の更新期間内であれば合格するまで何度でも受検することができます。
5月から高齢者の運転免許更新に実車試験導入~高齢者の事故を防ぐ実車試験とサポカー免許
このたび道路交通法が改正され、高齢ドライバーの事故防止に向けた対策として、今年5月13日から2つの施策がスタートします。一つは運転技能検査(実車試験)制度。もう一つは安全運転サポート車等限定条件付免許(サポカー限定免許)制度です。ここでは、5月から始まるこの2つの制度について解説します。
運転技能検査(実車試験)の導入
不合格でもバイクは運転可能
運転技能検査は普通自動車の免許保有者のみが対象ですので、大型特殊自動車(大特)・二輪・原動機付自転車(原付)・小型特殊自動車(小特)のみの保有者は対象外です。そのため仮に不合格となっても、原付免許や小型特殊免許は継続して使うことができます。
どんな違反をすると試験が必要なのか
新たに始まる実車試験は、75歳以上の高齢ドライバーで、下記に記した「一定の違反歴」のある人が対象となります。「一定の違反歴」とは、運転免許証の有効期間が満了する誕生日の160日前を基準に、その日から遡った3年間において犯した違反行為となります。
■「基準違反行為」について
1信号無視、2通行区分違反、3通行帯違反等、4速度超過、5横断等禁止違反、6踏切不停止等。遮断踏切立入り、7交差点右左折方法違反等、8交差点安全進行義務違反等、9横断歩行者等妨害等、10安全運転義務違反、11携帯電話使用等
サポカー限定免許制度の導入
運転技能検査(実車試験)の導入とともに新設されたのが、サポート車等限定条件付免許(サポカー限定免許)です。高齢ドライバーの運転免許の自主返納が奨励されていますが、どうしても車が必要という方に対して、安全性が認められる車については運転しても良しとする制度です。免許の返納をためらう人の利用を想定しており、認められると免許証に「普通車はサポートカーに限る」と記載されます。サポカー限定免許は、生活に車は必要だが運転が不安、という方を想定した免許制度で、あくまでも自主的な申請となります。
サポートカーの具体的な性能
サポカー限定免許で運転できる車について、警察庁では次のように発表しています。
・高度な衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)とペダル踏み間違い時加速抑制装置を兼ね備えている車種。
・衝突被害軽減ブレーキ搭載車(時速40キロで走行中に前方の止まっている車に衝突しない性能を保有する車種)
・対象車種は、2020年度以降に製造された国土交通省の性能認定を受けた普通自動車。
普通自動車に限られる限定免許
サポカーとはセーフティ・サポートカー(安全運転サポート車)のことで、自動ブレーキを搭載している車全般を意味する言葉です。このサポカー限定免許証はあくまでもドライバーの申請によるもので、しかも普通自動車に限定されます。多くの高齢ドライバーが乗るのは軽自動車ですが、こちらは対象外となっており、どこまで実効性があるのかわからないという声もあります。
まとめ
いよいよ始まる免許更新時の実車試験ですが、高齢ドライバーの事故の多さにようやく効果的な対策が始動するのではとの期待感があります。しかし、事故やマナー違反などは若い人も少なからずいるわけで、もっと年齢層を下げて実施しても良いようにも思います。大切なのは交通ルールに則った安全運転。今後の制度の行方を見守っていきたいですね。