新築時から介護向きトイレにしておく目的は、将来的に住環境を急に変えなくても済むということです。高齢者が認知症になってからリフォームすると、環境が一変し安心して使えなくなる可能性があります。高齢者にとっては使い慣れたものや場所が一番安心できることであり、少しでも不安を感じさせない空間が必要なのです。
新築時から考えておくべきトイレ対策~介護する人とされる人のためのトイレ
高齢者にとってトイレは生活の中の非常に重要な部分であるといえます。健康な人にとってトイレは何ら難しいものではありませんが、高齢者は歩行中の転倒、立ちくらみ、失禁、便秘、頻尿、ヒートショックなど、トイレ問題は数多くあります。介護が気になり始めた方や、将来の介護のために参考にしたい方など、トイレ対策で困らないためのポイントについてご紹介します。
新築時から介護を考える意味
夜中にひとりでトイレに行く危険性
高齢者は足腰や視力、聴力などの低下、さらには認知症を発症し記憶力の低下も予測しておかなければなりません。足腰や視力の衰えはつまずきや転倒につながるため、トイレまでの通路は歩きやすいようにしておきましょう。特に照明や手摺りはぜひ備えておきたいものです。夜間にトイレに行く場合、暗い通路を歩くことになると壁やドアにぶつかることもあります。できれば、人が通ると自動的に点灯するセンサー付き照明にして、高齢者の安全を守るようにしましょう。昼間でも視力の落ちた高齢者は薄暗く感じていることが考えられます。足元を照らすフットライトと併せて設置するといいでしょう。
暗い所へ移動したときに起こる視力低下
人は明るい所から暗い所へ移動したとき、一時的に視力が奪われ見えなくなります。この視力が奪われる時間は、若い人と高齢者で異なります。若い人は10~30秒ほどで見えるようになりますが、高齢者は1~2分もかかります。暗闇を手探りで歩き続け、壁やドアにぶつかりながらトイレに辿り着くことのないよう十分な配慮が必要です。一方、明るすぎるのも問題です。高齢者は光源の輝度が高すぎるとまぶしく感じます。
トイレの入口は問題が多く隠れている
トイレのドアは外開きだと、出るときに人とぶつかる可能性があり危険です。できれば横にスライドする引戸タイプがおすすめです。つまずきの原因となる段差をなくすのも必須です。車椅子が通りやすいよう入口は80cm以上にし、ドアの鍵は外からも開くことができるタイプだと、いざというときに役立ちます。仮にトイレで倒れて動けなくなった場合、鍵がかかった状態だとドアを開けるのに時間がかかってしまいます。また、ドアには外側にトイレとわかる貼り紙やパネルを貼っておくと、認知症高齢者が迷うことなくトイレに行けるようになります。
トイレ内は車椅子と介護者が入れる広さに
トイレの広さは、介護が必要な高齢者が利用する場合、介護者も一緒に入れる広さが必要となります。時には車椅子で入ることもありますので、それに対応できる広さとして、できれば1坪程度の広さを確保できればベストです。そこに手すりや収納(省スペース型)、手洗いなどを設置しておきましょう。
床材は転倒のことを考え、衝撃を吸収するクッションフロアにし、滑りにくい素材にしておけば、さらなる安全が期待できます。便器にはウォシュレットや暖房機能がついているといいでしょう。便器が暖かいと冬場に多いヒートショックの予防にもつながり安心です。
将来の介護のために新築時に備えるもの
将来、親の居室を介護しやすくすることを考え、あらかじめトイレ・洗面準備配管を施しておくと、必要なときに最小限の工事でトイレ・洗面付きの居室に改修できます。
介護が長引くと介護者のストレスが溜まり、心身ともに疲れてしまいます。トイレの問題は早めに対策をすることで、介護する側もされる側もその後が楽になるため、重要なポイントとなります。
まとめ
トイレが快適に使えれば介護はかなり楽になります。言い換えれば、トイレが狭くて使いづらいと介護が辛くなる可能性が高くなります。介護用トイレを設置する場合には、ケアマネージャなどの専門家にご相談ください。また、実際に車椅子での生活を想定したりトイレの広さを体験したい場合は、最寄りの住宅展示場でモデルハウスを見学することをお奨めします。各メーカーの特長や機能を比較することもできます。