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2023/01/15
住まい
#新築住宅 #ピアノ設置 #床補強

ピアノを設置するための
床補強は建築前と後付けの
どちらがいい?

新築住宅にピアノの設置を考える際、現在使用しているピアノがある場合は、新築工事と同時に補強工事を行います。しかし、いずれ実家にあるピアノを持ってくる可能性がある場合や、将来子どもにピアノを習わせたいと思っている場合は、どのタイミングで床補強が必要なのか悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。

将来的な設置予定でも建築前に設置場所を考えてあらかじめ補強を行うケースと、ピアノを設置する際に後付けで補強を行うケース。どちらのケースがいいのかについて解説します。

ピアノを設置するための<br />
床補強は建築前と後付けの<br />
どちらがいい?

■ピアノの種類ごとの大きさと重さ

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「ピアノって重そう。そのまま置いたら床が抜けるのでは?」とイメージされる方も多いかと思われます。では、実際の重さや大きさはどのくらいなのでしょうか。ピアノのタイプごとに大きさや重さについて解説します。また、床にかかる重さは、ピアノ自体の重さに加えて、椅子や演奏者の重さを考慮することが必要です。

 

☆アップライトピアノ

間口

147~156cm

奥行き

60~68 cm

高さ

121cmまたは131cm

重さ

210~275㎏

 

アップライトピアノを設置するには、約2畳分のスペースが必要です。アップライトピアノは4本の脚で構成されています。重心は後ろ側にあるので、前脚1本で重量の1/6、後ろ脚1本で1/3を負担する構造です。

240kgピアノの場合、前脚1本で40kg、後ろ脚1本で80kgを支えている計算となります。また、ペダルを踏み込んだ際に瞬間的に80kgの力が加わるといわれています。

 

☆グランドピアノ

間口

150㎝前後

奥行き

149~227㎝

高さ

100㎝前後

重さ

255~410kg

 

グランドピアノを設置するには、約3畳分のスペースが必要です。グランドピアノは3本の脚で構成されています。一番負荷がかかっているのは右前脚ですが、ほぼ均等に重量を負担しています。よって、300kgのピアノの場合、1本の脚につき100kgずつ支えている計算となります。

アップライトピアノと同様に、ペダルを踏み込んだ際に瞬間的に80kgの力が加わるといわれています。

 

☆電子ピアノ

本体幅

約140cm(88鍵盤のもの)

奥行き

最低30cm以上

重さ

90kg弱

 

電子ピアノを設置するには、約1.5畳分のスペースが必要です。電子ピアノの場合も、アップライトピアノタイプは4本脚、グランドピアノタイプは3本脚です。1本の脚にかかる荷重は30kg程度となります。

☆ハイブリットピアノ(アップライトピアノタイプ)

本体幅

145~150㎝

奥行き

40㎝~65cm

高さ

100㎝~120cm

重さ

100~140kg 

 

ハイブリットピアノ(アップライトピアノタイプ)を設置するには、約2畳分のスペースが必要です。アップライトピアノと同様に4本の脚で構成されています。重心のかかっている後ろ脚でも、1本の脚にかかる荷重は40kg程度となります。

 

☆ハイブリットピアノ(グランドピアノタイプ)

本体幅

約150㎝

奥行き

約120㎝

高さ

約180㎝

重さ

約200kg

 

ハイブリットピアノ(グランドピアノタイプ)を設置するには、約2.5畳分のスペースが必要です。グランドピアノと同様に3本の脚で構成されています。1本の脚にかかる荷重は73kg程度となります。

 

【参考】

ヤマハ株式会社 Web音遊人

ヤマハ株式会社 よくあるお問い合わせ(Q&A)電子ピアノ床補強

ヤマハ株式会社 よくあるお問い合わせ(Q&A)電子ピアノ設置スペース

島村楽器 ヤマハハイブリットピアノ全機種展示


■ピアノ設置に床補強は必要?

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上記でピアノの重さと一本の脚にかかる負担を確認しました。では、このような荷重を持ったピアノを設置する場合、床補強は必要なのかについて考察します。

 

<新築住宅の床の強度>

新築住宅の床の強度は、建築基準法で「1㎡あたりの床の積載荷重1800N(約180kg)に耐えられる構造とすること」が定められています。積載荷重とは、建物の床に置く家具や荷物といった移動可能なものの重さのことです。部屋の広さが6畳(=約9.9㎡)の場合、1782kgの重量に耐えられる計算になります。よって建築基準法上は、同じ部屋に重量のある家具や本棚を同時に設置するといった場合を除いては、ピアノの設置において床補強の必要はありません。

 

<床補強をするメリット>

建築基準法における「荷重に耐えられる構造」とは、「住宅が破損しないこと」を指しているため、建物の構造上問題のない床のたわみは考慮されません。部屋の模様替えをしても、ピアノのこまめな移動は考えづらいため、長期間同じ場所に荷重がかかり続けることになります。ピアノを配置した床やその周囲の柱や梁は、他の部分に比べてストレスのかかった状態が続いています。ストレスを受け続けた床は沈む感じがしたり、床鳴りが起きたりといったトラブルが起きる可能性が強くなりますが、床補強をすることで防ぐことができます。また構造材を通常より多く配置するので地震にも強くなります。

設置部分の床の不陸やたわみが、ピアノ自体の構造に影響を及ぼして調律が狂ってしまうこともあるようです。

 

【参考】建築基準法施行令第85条


■ピアノの床補強を業者に依頼する場合

床補強を新築時に施工業者に依頼する場合や、引っ越し後にリフォーム工事を行う場合は、どういった方法があるのかについて解説します。

 

<新築工事時に補強する場合>

新築時にあらかじめ床補強を行う際は、図面作成時の打合せでピアノの設置位置を決定します。ピアノの荷重のかかる部分について、部材の位置を調整したり、根太の本数を通常の2倍に増量したり、鋼製梁や鋼製束を設定するといった方法が考えられます。施工会社にもよりますが、概算金額としては1坪(2畳)につき、プラス1万円前後です。グランドピアノでも3~5万円程度の追加金額で施工可能なケースがほとんどです。

また、新築時にピアノの配置を設定するメリットとして、窓の位置や照明の位置を考慮できる点があります。ピアノは、木製のため環境によって調律の狂いが大きくなるケースがあります。そのため、直射日光が当たりすぎる配置や暖房機器の真横への配置は乾燥が進みやすいので、できる限り避けるのがおすすめです。また、グランドピアノ以外は、壁に沿って配置するのが一般的です。照明の位置によっては、楽譜台が演奏者の影に重なって、見えづらくなってしまうこともあります。新築時であればピアノの真上など最適な位置に専用照明を設置しましょう。

 

<ピアノ搬入決定時にリフォームを行う場合>

ピアノを設置することが決まったあとでリフォーム工事を行う場合は、床下に鋼製束を設置する方法が一般的です。概算金額としては5万~10万円程度です。

床下に潜って作業できる仕様となっていれば問題はありませんが、施工方法によっては、床下に潜れない場合があります。その場合は、フローリングを剥がして床に穴をあけて施工します。床材の張り替えも必要となるので概算費用としては15万円程度となります。使用しているフローリングが廃盤になっている場合は、床材を剥がした部分は違う商品で仕上げることとなります。また、同じ商品でも年数が経っている場合、環境によって色味に差が出てしまいます。そのため、ピアノの配置部分の床補強は、できる限り新築時に考慮しておくことがおすすめです。


■ピアノの床補強をDIYでする場合

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DIYで床補強をする場合の方法について解説します。下記の方法は床を補強する目的以外にも、床材の保護や無駄な反響を防ぐ作用もありますので、新築時に床補強対策をされている場合でも併用を推奨します。

 

<インシュレーターの設置>

インシュレーターとは、ピアノの脚の下にはめる部品です。ゴム製、プラスチック製、木製のものが販売されています。荷重を分散させるほか、底面がクッション素材でできているので防音や地震対策ができます。グランドピアノの場合はインシュレーターの下にフラットプレートを重ねて設置します。材質によって価格差が大きいため、概算価格は3千~8万円前後です。

 

<ピアノ専用フラットボードの設置>

フラットボードとは、アップライトピアノ専用の下敷きです。アップライトの形に足元部分がくり抜かれているので、ペダルを使用する時や椅子を動かす時にも邪魔にならないのがメリットです。床断熱からの熱を遮断できるタイプもあります。概算価格は2万~5万円です。ホームセンターで調達できるものでは、ピアノのサイズに合わせたタイルカーペットやラグで代用可能です。防音タイプのタイルカーペットであれば、ピアノの脚から伝わる振動音を抑えることもできます。

 

<敷板の設置>

敷板とは、ピアノの脚の下部分に敷く平板です。インシュレーターに比べて設置面積が広くなるので、和室の畳の上に設置する場合などに畳のへこみを軽減して一部分だけ高さが下がってしまうのを防ぐことができます。概算金額は2千5百円前後です。ホームセンターで調達できるものでは、コンパネやベニヤ板で代用可能です。


■ピアノ設置場所が2階やマンションの場合の注意点

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ピアノを2階に設置、またはマンションに設置するためにリフォームやDIYを計画する場合は下記の点に注意が必要です。

 

<2階にピアノを設置する場合>

2階の床に補強をする場合は、2階の床、または1階の天井のどちらかに穴をあけて工事を行います。概算費用は、12万~20万円程度です。2階の床補強は、施工を断る業者もいます。設置場所を考えるにも制約があり、1階と2階の壁の位置がそろっている場所や主要構造材が入っている場所に限定されるケースもあります。わかりやすく例えると、「1階に大空間のリビングがある場合、リビングの中央部の真上にあたる2階部分への設置は難しいケースも考えられる」ということです。

家を新築し、将来2階にピアノ設置をしたいと考えている場合は、最初からピアノ設置を加味した新築計画を立てましょう。子どもが小さいうちはリビングに、成長したら子ども部屋にピアノを置きたい場合などは、両方の部屋に床補強をしておくと安心です。

 

<マンションの場合>

マンションの場合も、建築時に必要とされる建築基準法上の積載荷重の数値は同じなので、設置可能です。築年数が経過している場合はその限りではありません。まずは、管理組合にピアノを設置したい旨を相談しましょう。騒音防止で演奏可能時刻に制約がある場合や搬入経路について打合せが必要な場合もあります。


■まとめ

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ピアノ設置時の床補強が必要かについて、補強するタイミングによっての工法と概算費用について解説しました。将来的な設置予定のピアノについても、床補強は新築時に行うことがおすすめです。費用面、仕上がり面、建物に及ぼす影響、ピアノにとっての良い環境づくりといった全てにおいて、新築時に準備しておく方が良いと考えられます。

新築時であればかかるコストも最小限に抑えられるので、ピアノ設置を予定している方は、検討してはいかがでしょうか。