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2023/10/22
暮らし

ベランダ園芸を楽しもう!
準備やコツを初心者向けに
わかりやすく解説

「植物を育ててみたいけれど、庭がないから無理…」と思っている方には、ベランダ園芸をおすすめします。マンションなどの集合住宅や庭がない一戸建ての住宅でも、ベランダを有効に活用すれば花や緑を楽しむ暮らしを満喫できますよ。

今回は、ベランダ園芸の初心者の方に向けて、事前の準備とおすすめの植物、ベランダ園芸を最大限に楽しむコツについてご紹介いたします。

ベランダ園芸を楽しもう!<br />
準備やコツを初心者向けに<br />
わかりやすく解説

■ベランダ園芸の準備

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ベランダ園芸をはじめる際は、次のような準備が必要です。

 

◎規約と日当たりの確認

集合住宅はベランダの利用の規約があるため、取り組む前に確認しましょう。特に、緊急時の避難経路になる場所に物を置けない点、共有する排水口に土や大量の水を流せない点に注意してください。また、すべての建築物のベランダに置ける重さは、1㎡あたりおよそ180kgと法律で決められているので、大量のレンガや石などは置けません。

植物の生長に欠かせない日当たりもチェックしましょう。ベランダの日照時間は季節によって異なるため、植物の生育期である春から秋にかけての日当たりや角度を調べておくと安心です。植物の中には、1日のうち数時間だけ日が当たる半日陰(はんひかげ)でも育つ種類があるので、状況に合わせて選んでください。

【参考】e-gov法令検索「建築基準法施行令」第八十五条

 

◎サイズの採寸と床材(ゆかざい)

次に、洗濯物の干し場や室外機、避難経路などを除いたスペースを把握し、採寸しながらレイアウトを考えましょう。集合住宅では、ベランダの傷の防止や防音の目的で床材を敷くことをおすすめします。ベランダ園芸で使用する床材は、排水性がよく掃除や移動がしやすい素材を選んでください。

インターネットなどではおしゃれなベランダの画像が紹介されていますが、最初から凝ったデザインにすると管理が負担になることがあります。初心者の方はシンプルに数個のプランターからはじめて、慣れてきたら植物や雑貨などの数を増やすとよいでしょう。まずは最小限の棚やプランター、園芸用ツールなどの置き場所を決定します。

 

◎ツールと苗の準備

並行して、植物の栽培に必要なツールとして、小型のシャベルとハス口(はすくち)が取り外せるジョウロ、園芸用のハサミ、手袋などを用意します。プランターは通気性がよい素焼きと、移動が楽なプラスチック製などがあるので、目的に合わせて選んでください。さらに、草花用の培養土やプランターの底に敷く鉢底石(はちぞこいし)、液体肥料も必要です。

早春にホームセンターなどで見かける花の苗は、ビニールハウスで育てられたものです。寒い時期に植え付けると植物が弱る可能性があるため、初心者の方は十分に温度が上がった頃に苗を購入して植えるとよいでしょう。背が伸びる植物やつる性の植物を育てるときは、支柱やトレリス、園芸用のビニタイも用意してください。

 

◎夏と冬・風の対策

夏の強い日差しを浴び続けた植物は、水の不足で枯れたり葉が茶色く焼けたりすることがあります。夏の間は遮光ネットを設置するか、午前中だけ日が当たる場所にプランターを置くなどの対策をしてください。コンクリートの照り返しが強い場所は、床材を敷いて植物を守りましょう。冬越しをする植物は、不織布(ふしょくふ)などを利用して保温します。

また、集合住宅は高層階ほどベランダの風が強くなるため、倒れやすいものや飛ばされやすいものを置かないでください。規約で禁止されていなければ、フェンスに防風ネットを設置する方法もおすすめです。台風や強風の日には、風が当たらない場所に植物や棚などを移動するか、室内に取り込むなどして対策しましょう。


■ベランダ園芸におすすめの植物

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それでは、ベランダ園芸で育てる植物の選び方と、初心者の方におすすめの植物をご紹介いたします。

 

【植物の選び方】

ベランダ園芸では、花びらや葉が落ちるもの、背が高く伸びすぎるもの、生育旺盛で繁殖しすぎるものは向きません。初心者の方は、次に紹介するようなポピュラーで育てやすい植物をおすすめします。

よい苗の選び方は、葉の色が濃くて茎が太いもの、つぼみが付いているもの、鉢底の穴から根が見えるもの、土にコケが生えていないものなどが目安です。ここで紹介する植物のほとんどは日光を好む種類なので、ベランダの日当たりを確認してから購入してください。

 

【草花(くさばな)類~一年草(いちねんそう)】

一年草とは、発芽してから枯れるまでのサイクルが1年の草花を指します。翌年も同じ植物を育てるときは、病気や生育不良などが出る連作(れんさく)障害を防ぐために新しい土を用意して植えてください。

 

<パンジーやビオラ>

● スミレ科スミレ属

● 開花期:10~5月

種類が豊富で育てやすく、ほかの植物との寄せ植えにも向いています。日当たりを確保して適切に手入れをすれば、冬の間も花を楽しめます。

<マリーゴールド>

● キク科マンジュギク属(タゲテス属)、一部は多年草

● 開花期:4~12月

暑さに強く丈夫で、鮮やかな黄色やオレンジ色の花が咲きます。やや小さめで分岐するタイプと、背が高く大輪の花が咲くタイプなどがあります。

<ペチュニア>

● ナス科ツクバネアサガオ属(ペチュニア属)、一部は多年草

● 開花期:3~11月

色や咲き方が豊富で、鉢をつり下げるハンギングの方法でも育てられます。次々と分岐してボリュームが出るタイプと、茎が垂れるタイプがあります。

 

【草花類~多年草(たねんそう)】

多年草とは、花が咲き終わった後も根が残り、翌年以降も新芽を出して花を咲かせる草花を指します。地上部の茎や葉が残るタイプと、宿根草(しゅっこんそう)と呼ばれる地上部が枯れて根が残るタイプがあり、球根類も多年草に含まれます。

 

<ゼラニウム>

● フウロソウ科テンジクアオイ属(ペラルゴニウム属)

● 開花期:主に3~12月

冬も葉が残る常緑(じょうりょく)性で種類が多く、香りがあるタイプや茎が下がるタイプなども流通しています。ゼラニウムは、花びらが散らない品種を選びましょう。

<カーネーション>

● ナデシコ科ナデシコ属(ダイアンサス属)

● 開花期:主に4~6月

丈夫で育てやすく、切り花やアレンジメントにして室内でも観賞できる常緑性の植物です。花のサイズや咲き方、付き方などが豊富で、さまざまな種類が流通しています。

<ムスカリ>

● キジカクシ科(クサスギカズラ科、ヒアシンス科、ユリ科)ムスカリ属

● 開花期:3~5月

ブドウのような愛らしい姿が人気の球根類で、基本的には開花後も植えたままで管理できます。栽培に慣れたら、ほかの球根類や草花との寄せ植えに挑戦しましょう。

 

【ハーブ類】

独特の香りを楽しめるハーブ類は、料理やお菓子、クラフトなどに幅広く活用できます。本来は野草として生育するため、丈夫で手間がかからない点がメリットです。花を観賞する植物とシンプルなハーブを組み合わせて、おしゃれなベランダ園芸を楽しみましょう。

 

<ローズマリー>

● シソ科マンネンロウ属(ロスマリヌス属)の低木

● 開花期:主に11~5月/収穫期:主に4~11月

1年を通してさわやかな香りが楽しめる、丈夫で育てやすいハーブです。上に伸びるタイプと地をはうタイプ、その中間があり、花や葉の種類も好みに合わせて選べます。

<レモンバーム>

● シソ科コウスイハッカ属の多年草

● 開花期:6~5月/収穫期:4~10月

レモンに似た香りの葉を持つハーブで、日当たりが悪い場所でも育ちます。冬に地上部が枯れますが、寒さに強いため冬越しも容易で、春になると新しい芽が出てきます。

<バジル>

● シソ科メボウキ属の(国内では)一年草

● 開花期:7月/収穫期:6~8月

パスタやピザなどに欠かせないバジルをベランダで栽培すれば、葉を収穫して料理に使用できます。葉の硬化を防ぐには、花がつく穂を摘み取りながら育てます。

 

【野菜】

草花だけでなく、新鮮な野菜もベランダ園芸で育ててみましょう。お子さんがいる家庭では、理科の学習や食育にもつながります。野菜の栽培には、植物性・動物性の原料を使用した有機肥料がおすすめで、近年ではにおいが出ないタイプも販売されています。

 

<ミニトマト>

● ナス科トマト属の一年草(国内)

● 収穫期:7~8月

大きいトマトよりも育てやすく、多くの実を収穫できます。支柱を立てて栽培し、メインにする枝を残して横から出る脇芽(わきめ)を摘み取りながら育てましょう。

<ラディッシュ(はつかだいこん)>

● アブラナ科ダイコン属の一年草

● 収穫期:4~6月/10~12月

種(たね)まきが必要ですが、30日くらいで収穫できるので初心者の方も気軽に育てられます。混み合う部分の芽を抜いて管理し、根の直径が数cmになったら収穫できます。

<葉ネギ>

● ヒガンバナ科(ユリ科)ネギ属の多年草

● 収穫期:10~2月

薬味(やくみ)や香りづけとして人気の葉ネギは、冬の間の貴重な野菜の1つです。根ごと引き抜かずに葉を刈り取りながら収穫すれば、再び新芽が出てきます。


■ベランダ園芸を120%楽しむコツ

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最後に、ベランダ園芸を楽しむコツをご紹介いたします。

 

☆レイアウトの工夫

ベランダのスペースを有効に活用するには、レイアウトの工夫が必要です。近年では100円ショップなどで安く材料が手に入るので、棚を手作りしてもよいでしょう。棚は複数の植物を置けるだけでなく、日が当たりにくい下段にツールなどを収納できます。キャスター付きの棚は、掃除やレイアウトの変更時などにすぐ移動できる点がメリットです。

棚ではなく、小さめのボックスやテーブル、イスなどにプランターを置く方法もあります。トレリスなどを設置できるベランダでは、ハンギングの栽培も楽しめます。竿(さお)にS字フックなどを設置して、小さい鉢をつるす方法もおすすめです。室外機の上の日当たりがよいときは、専用の棚を設置して植物を置くこともできます。

どのようなアイテムを使用する場合でも、プランターの重さやアイテムの安定性を確認し、安全に配慮するようにしましょう。

 

☆植物のお手入れのポイント

毎日プランターの土をチェックして、表面が乾いていたら午前中に水やりをしましょう。ジョウロの細い口から土に向けて、静かに水を与えてください。水分の蒸発が速い真夏は、涼しい早朝と夕方に水を与えることもあります。花を観賞する植物は、咲き終わった花(花がら)を摘み取れば長く楽しめます。下部の葉が黄色く変色したら、肥料を与えてください。

生長して全体に混み合ってきた部分は、茎を切り取って中まで風を通します。害虫や病気に気付いたら、すぐに対処してまん延を防いでください。薬剤を使用するときは風向きに注意して、近隣へ迷惑がかからないようにしましょう。

冬越しする植物は不織布などでプランターを巻くか、室内の窓辺に取り込みます。冬の水やりは、回数を控えめにして続けましょう。多年草は数年に1回のペースでひと回り大きな鉢に植え替えるか、根や茎を整理して同じ鉢に植え直します。

 

☆ベランダ園芸の注意点

先述のとおり、集合住宅では物の置き場と水の使用量に注意し、花びらや葉、土なども排水口に流さないでください。つる性の植物は、隣や階下のベランダに伸びないように支柱などに留め付けます。ハンギングは風で落ちたり周囲にぶつかったりすることがあるため、天候に合わせて安全な場所に移動してください。

また、室外機の前やベランダのフェンス(手すり)の外側には、プランターを設置しないようにしましょう。そのほか、規約で禁止されている行為は避けてください。定期的にベランダを掃除して、きれいな状態を保つこともポイントです。


■ベランダ園芸を楽しもう!

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今回は、ベランダ園芸の初心者の方に向けて、事前の準備とおすすめの植物、ベランダ園芸を楽しむコツなどについてご紹介いたしました。集合住宅では、ベランダの規約を確認してから取り掛かりましょう。

初心者の方は育てやすい植物を選び、管理に慣れたら少しずつ種類を増やすことをおすすめします。限られた空間を有効に活用して、おしゃれなベランダ園芸をお楽しみください。