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2025/12/18
暮らし

おせち料理の種類や意味とは?
おせちの歴史についても解説

お正月の食卓に欠かせないおせち料理。重箱のふたを開けた瞬間の華やかさや、整然と並ぶ料理の美しさは年の始まりならではの特別感があります。

おせち料理は見た目が華やかなだけでなく、一つひとつの料理に、「子孫繁栄」「健康」「長寿」「商売繁盛」といった願いや縁起が込められてきた伝統的な日本の年始の食文化です。

この記事では、おせち料理の5つの分類(祝い肴/口取り/焼き物/酢の物/煮しめ)と代表的な食材に込められた願いの意味、重箱への詰め方をご紹介します。

おせち料理の種類や意味とは?<br />
おせちの歴史についても解説

■おせち料理の5つの分類

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おせち料理は、それぞれに意味や願いが込められています。中身は大きく5種類に分類されます。

 

【祝い肴】

祝い肴はおせちの中でも特に重要とされる三品で、地域によって「祝い肴三種」が異なります。関東では「数の子・黒豆・田作り(ごまめ)」、関西では「数の子・黒豆・たたきごぼう」が定番です。

<数の子>

ニシンの卵を塩漬けしたもので、たくさんの卵が並んでいることから「子孫繁栄」を象徴します。

<黒豆>

黒は、邪気を払うという意味があります。「まめに働けるように」という健康への願いが込められています。

<田作り>

関東の祝い肴に含まれます。カタクチイワシの幼魚を乾燥させ、甘辛く味付けした料理です。イワシを田畑の肥料に使ったところ豊作になったことに由来し、「五穀豊穣」の願いが込められています。

<たたきごぼう>

関西の祝い肴に含まれます。ごぼうは地中深く根を張ることから、「家業が土地に根付く」「長寿」などの意味があります。

 

【口取り】

口取りは、会席料理で最初に出される料理のことで、彩りが良く、見た目が華やかなことが特徴です。

<かまぼこ>

紅白かまぼこは半月形が日の出を思わせるため、縁起が良い食材です。「紅」は魔除け、「白」は清浄や神聖さを意味します。古くから「右紅左白(うこうさはく)」というしきたりがあるため、紅色のかまぼこを右側に置きます。

<栗きんとん>

漢字で「金団」と書き、黄金色の見た目から「金運上昇」の願いが込められています。

<昆布巻き>

魚などを昆布で巻いた料理です。漢字で「養老昆布(よろこぶ)」と書くことから、「不老長寿」の願いが込められています。

<伊達巻>

長崎の「カステラかまぼこ」に由来します。巻き物のような形から、「学業成就」の願いが込められています。

 

【焼き物】

焼き物は一汁三菜の一つで、海の幸を焼いた料理です。出世魚や縁起の良い魚が用いられます。

<鰤(ぶり)>

成長につれて名前が変わる鰤は、出世魚の代表です。「立身出世」の願いが込められています。

<鯛>

「めでたい」の語呂合わせで知られる鯛は、長生きする魚であることから、「長寿」の象徴とされています。赤い色には魔除けの意味もあります。

<海老>

長いひげや背を丸めた姿が長寿を連想させる海老には、「腰が曲がるまで長生きできるように」という願いが込められています。

 

【酢の物】

酢のものは、食事中の口をさっぱりさせるため、箸休めの役割があります。

<酢れんこん>

輪切りにしたれんこんで作る酢の物です。花の形に飾り切したり、梅酢につけて紅白の色合いにして華やかにしたりします。複数の穴が空いていることから、「将来の見通しが良くなるように」という願いが込められています。

<紅白なます>

人参と大根で作る酢の物です。色合いや細切りにした形がお祝い事に使われる紅白の水引に似ていることから、「家庭円満」の願いが込められています。

<ちょろぎ>

シソ科の植物で、塊茎部分を梅酢で色付けして作られます。漢字では「長老喜」「長老木」と表記され、「長寿」の象徴とされています。また、黒豆に添えることで、「まめに健康で長く働けるように」という意味合いも込められているのです。

 

【煮しめ】

煮しめは、里芋やくわいなど、縁起の良い根菜を中心に、さまざまな具材を一つの鍋で煮含める料理です。具材を一緒に煮ることで、「家族が一つにまとまる」という意味が込められています。

<筑前煮>

筑前煮は、にんじんやごぼう、里芋など根菜と鶏肉を一緒に煮た料理で、「家庭円満」の意味が込められています。煮しめや筑前煮に含まれる具材にも、縁起の良い意味が込められています。

<里芋>

里芋は親芋の下に子芋、その下に孫芋と連なることから、「子孫繁栄」の願いが込められています。

<くわい>

大きな芽が出るため、「めでたい」を連想させる縁起がいい食材です。「芽が出ますように」と、「立身出世」の願いも込められています。

<手綱こんにゃく>

こんにゃくの真ん中に切り込みを入れて作る手綱こんにゃくは、結び目があることから、「良縁」や「夫婦円満」を象徴しています。また、手綱を締めるように自分自身を律するという意味も込められています。


■段数ごとに違う!重箱の詰め方の基本

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おせち料理を重箱に詰めるのは、「幸せを積み重ねる」という意味があります。一番上の段が一の重です。

近年は三段重が主流ですが、基本は四段重(与段重)とされています。地域によっては五段重にする場合もありますが、五段目は神様からの福を詰める場所として、何も入れずに空にしておく風習があります。

 

<四段重の詰め方>

「四」は縁起の悪い数字のため、四段目は「与」を使って「与の重」と呼びます。五段重にする場合は、五段目の重箱は空にしておきます。

●  一の重:祝い肴(数の子、黒豆、田作り、たたきごぼうなど)

●  二の重:口取り、酢の物(かまぼこ、伊達巻、栗きんとん、酢れんこんなど)

●  三の重:焼き物(鰤、鯛、海老など)

●  与の重:煮しめ(お煮しめ、筑前煮など)

<三段重の詰め方>

近年、主流となっている三段重は、一の重に祝い肴と口取り、二の重に焼き物と酢の物を詰めます。

●  一の重:祝い肴、口取り(かまぼこ、伊達巻、数の子、黒豆、田作り、たたきごぼうなど)

●  二の重:焼き物、酢の物(鰤、鯛、海老、酢れんこん、紅白なますなど)

●  三の重:煮しめ(お煮しめ、筑前煮など)


■おせちをきれいに詰めるコツ

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おせちを重箱にきれいに詰めるには、コツがあります。美しく詰めるために知っておきたいポイントをご紹介します。

 

◎形が崩れにくいものを先に詰める

かまぼこなど、形が崩れにくいものを先に詰めるのがコツです。栗きんとんなど柔らかくて型崩れを起こしやすいものは、後から詰めましょう。

 

◎汁ものはカップを使う

酢の物や黒豆など、汁が出やすいものはカップや小鉢などを使いましょう。他の料理に汁が移るのを防げます。

 

◎色合いを意識する

おせちを詰めるとき、同系色のものが隣り合わないように色合いを意識して詰めましょう。例えば、伊達巻や栗きんとん、数の子など同系色の食材は、隣り合わないように離して配置すると、重箱全体の配色バランスが整います。「あしらい」と呼ばれる飾り小物を使うと、一層華やかに見せられます。

 

◎奇数の品数が基本

おせちの品数は、奇数が縁起が良いとされます。1段に9つや7つなど、奇数になるように詰めましょう。「市松」「末広」「七宝詰め」など重箱にはさまざまな仕切り方があり、市販の仕切りを利用すると美しく詰められます。色合いのバランスも考えながら、どの料理を配置するかあらかじめ決めておくと、仕上がりがより美しくなります。


■おせち料理の歴史

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おせち料理の始まりは、弥生時代にまで遡るといわれています。季節の変わり目である「節(せち)」の日に、神様にお供え物をする「節供(せちく)」がおせちの原型です。

平安時代になると「節」は宮中行事となり、朝廷では正月を含む「五節会(ごせちえ)」で、神様に供える料理を「御節供(おせちく)」と呼んでいました。江戸時代に入ると、御節供は庶民にも広がります。

なかでも、一年の始まりである正月は特に重要だと考えられ、お正月に家族でおせち料理を食べる風習が生まれたといわれています。もともとは器に盛られていましたが、江戸時代末期から明治時代にかけて、「めでたさを重ねる」という意味を込めて重箱に詰められるようになりました。

戦後以降は、百貨店で重箱入りのおせち料理が販売されるようになり、日本人の慣習として広まっていきました。

現代では冷凍おせちや少人数用もあり、自宅で一から作らなくても手軽に購入できます。また、従来の和風に加え、洋風や中華などバリエーションが豊富になり、多彩なおせちを楽しめるようになりました。


■まとめ

おせち料理は、祝い肴・口取り・焼き物・酢の物・煮しめという5つの種類に分類され、それぞれに新年への願いが込められています。重箱への詰め方や歴史を知ることで、おせちが単なる正月料理ではなく、新しい一年の幸せを願う大切な文化であることが分かります。

現代では伝統を大切にしながらも、さまざまなタイプのおせちが選べるようになりました。新しい年の始まりは、おせち料理の一品一品に込められた意味を意識しながら、ゆっくり楽しみながら味わってみてはいかがでしょうか。