子が親との同居を考える最大の理由は、「親の老後が心配だから」という調査結果があります。両親のどちらかが亡くなった場合はさらに同居の可能性が高くなります。そして、親子同居経験者に限ると、実に7割以上が介護を経験していると言われています。
介護がしやすくなるのは
3つの移動がラクにできる住まい
介護が必要になることが予想される親との同居において、住まいの中のどこをどう改善すべきか。ここでは足腰が弱まり、病気がちな親との同居を想定し、3つのスペースで介護がしやすくなる提案をしています。第一回目は総論を、第2回~第4回で具体的な提案をしていきます。
同居の最大理由は「親の老後が心配」
介護しやすい共用型の二世帯住宅
親世帯と子世帯が同居する場合、新築する住宅のタイプは二世帯住宅が圧倒的に多くなります。二世帯住宅には独立型と共用型があります。独立型はキッチン、浴室、玄関などすべてが親世帯と子世帯で別々になり、互いのプライバシーが保ちやすくなります。
共用型は基本的な生活空間を共用し、サブキッチンやサブリビングなどを設けた住宅です。共用型によく見られるのが、1階に親世帯、2階に共有のLDK、3階に子世帯の居室をつくる3階建住宅です。2階で交流し、1階と3階で個々の暮らしをするという空間の使い分けをしています。
独立型は親世帯が体力的にまだまだ元気で、子世帯に頼ることなく生活できるような方に向いています。一方、体力的に低下が見られる高齢の親との同居では、共有部分の多い共用型二世帯住宅が適しているでしょう。共用型では共に食事をとったり、リビングでくつろいだりと、親を見守りながら生活することができます。
介護がはかどる3つの移動
介護が必要になってくると、移動が最も重要なポイントとなります。具体的には、トイレ、リビング・ダイニング、玄関の3つです。
①トイレへの移動をより安全に
トイレは一日に何度も行き来する場所です。高齢者はとかく頻尿になりやすく、多いときは20回以上になることもあります。特に夜間の移動は不安な状態での歩行を強いられるため、移動する時に転倒の危険性があります。
高齢者が独りで移動することを考えると、トイレまでの距離をできるだけ短くして、廊下やトイレは照明がセンサーで自動的に点くようにしておきましょう。トイレの中では車椅子が回転できる広さがほしいところです。トイレの広さが足りないときは洗面と間仕切りを設けないワンルームにするなどの工夫が必要です。
②リビング・ダイニングへの移動
リビング・ダイニングは家族と一緒に食事をしたり、団らんを楽しんだりする場です。共用型の二世帯住宅では2階のリビング・ダイニングまで移動するか、1階の親世帯のリビング・ダイニングで過ごす、のどちらかになります。2階までの移動が必要になると階段を上ることになり、手すりや傾斜角度、踊り場などにも配慮しなければならないでしょう。
③玄関までと玄関からの移動
親世帯が外出する機会は、散歩や通院、買い物さらにはデイサービスなどがあります。外出までの経路としては、居室から玄関フロア、玄関、玄関アプローチといった流れになり、こうした場所での障害を取り除く必要があります。フロアと玄関の段差、階段、玄関アプローチの長さや角度など、スムーズな移動が可能となるよう工夫が必要となります。
まとめ
高齢者は小さな段差でもつまずき、転倒することがよくあります。転倒して骨折した場合などは長期入院となり要介護度が高くなる可能性があります。介護しやすい住まいとは、移動がしやすく独りで安心して暮らせる住まいであると言えるでしょう。次回は、トイレまでの移動とトイレ内の動きやすさについてご紹介します。