現在、介護を必要とする要介護・要支援者は約658万人。2025年には784万人にもなると言われています。職員のほうも、今の120万人が2025年には現在の倍にあたる253万人の介護職員が必要とされてはいますが、実際は約38万人が不足すると言われています。こうした人材不足を背景に、国は介護ロボットの普及に努めており、全国の施設の約3割で何らかの介護ロボットが導入されています。
介護ロボットって何?~6つの分野で開発が進む介護支援ロボット
介護ロボットという言葉を聞いたことはありますか?今、あらゆる分野にロボットが導入されていますが、介護現場においてもさまざまなロボットが開発され始めています。ここでは介護ロボットとはどのようなものか解説します。
人材不足を補う介護ロボット
介護ロボット導入のメリット
今のロボットは人材不足を補うというより、人の手間や困難を省くための装置的なものがほとんどです。人が苦手なところを補うことで、本来の介護の質を高めていくといったことを目指しているように思われます。では、介護ロボットを導入するメリットを考えてみましょう。
①介護者の作業効率化
物品管理や清掃、パソコン業務など介護士でなくてもできる業務まで行っている現状を、ロボットにまかせることで介護現場の作業効率化ができます。
②介護者の負担軽減
人を抱えて、車いすやベッドに移乗したりするのは、体力が必要です。介護ロボットで介助活動ができると、介護職員の負担を軽減することができます。
③介護の質の向上
排泄や入浴、食事などADL(Activities of Daily Livingの略=日常生活動作)の支援をロボットが支援し、その分、人はコミュニケーションや交流といった心の支援により不安のない生活を送れるようになります。
重点開発される6つの分野
国がまとめた介護ロボットの開発分野としては、「移乗介助」「移動支援」「排泄支援」「見守り・コミュニケーション」「入浴支援」「介護業務支援」の6分野です。
移乗介助や移動支援、入浴介助では介護者の負担が大きくなりがちで、腰痛などを理由に介護職を離れる職員も少なくありません。ロボット導入により介護者の身体的負担を軽減することが可能となります。では、具体的にはどのようなロボットなのか、簡単に具体例を紹介します。
〇夜間などの見守りロボット
施設などで夜間の巡回を職員に代わって行ってくれる見守り用ロボット。入居者が多いと20~30分もかかり、本来の業務に支障が出ることもあります。また、定期巡回のたびに起こされていた施設入居者が、朝までぐっすり眠ることができるようになります。
〇排泄を知らせてくれるロボット
夜中に数回、強制的にオムツ替えされていた入居者も、排泄した時点で知らせてくれるロボットがあることで、必要時のみの対応で済み入居者のストレスを軽減します。
〇職員の筋力補助ロボット
東京理科大学工学部の小林宏教授が開発した「マッスルスーツ」というロボットは、人が装着して使うロボットです。着用者の背筋力をサポートし、筋力があまりなくても重量物の上げ下ろしを助けてくれます。動力はモータではなく、非常に強い力で収縮する、空気圧式の人工筋肉を使用します。介護者の負担の大きいベッドから車椅子への移乗に役立つロボットです。
〇認知症診断が家庭でできるロボット
長崎大の小林透教授(情報工学)の研究グルーは人工知能(AI)を使って、認知症検査を行うロボットを開発しました。ロボットは高齢者役に質問を出し、答えてもらうことで10分ほどで診断が終了。結果はスマートフォンなどの端末に送信されます。
介護ロボット普及が進まない要因
ロボットの利用が進まない要因として、高い費用があります。価格としては、比較的低価格なコミュニケーショロボットが数万円から数十万円、移乗支援ロボットが数十万円から数百万円と高額です。そのため政府は補助金制度を平成27年度に実施しましたが、申し込みが多すぎたようで、それ以後は実施されていません。現在は自治体で補助金制度を設けているのみです。また、ほかにも操作を覚えるまでに時間がかかること、費用対効果などの問題があります。年配の介護職員の場合、介護ロボットの導入によってむしろ負担が増えてしまうこともあります。
まとめ
介護ロボットを導入したはいいが、思うように効果が出ないとか、使いこなせず倉庫に眠ったままといったケースがあります。ロボット導入にあたっては、施設側で職員全員の意思統一と導入後のフォローや計画的な活用を考えておくことが大切です。興味のある方は、導入に成功している施設を見学するなど、まずは情報収集から始めてみましょう。
参考:
厚生労働省