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2021/09/26
暮らし

「住まい」にまつわる漢字の由来あれこれ

「住まい」にまつわる漢字といえば「家」「住」「宅」「室」「居」「屋」などを思い浮かべるのではないでしょうか。あらためて見ると意外に多いと感じるかもしれません。どれも同じような意味に思われがちですが、実はこれらの漢字には、それぞれの由来や意味が秘められているのです。今回はそんな身近な「住まい」にまつわる漢字について解説していきましょう。

「住まい」にまつわる漢字の由来あれこれ

「家」の字に秘められたある儀式

まずは「家」から見ていきましょう。2つ以上の漢字や意味を組み合わせて作られた文字のことを「会意文字」といいますが、この「家」もそれにあたります。この字は、家の中にいる家畜の豕(豚・ぶた)を表しています。「家」は、大切な家畜と住む建物という意味から出来ているという説があります。一方、家の跡継ぎを決める時の儀式において、豚を生けいけにえに捧げる風習が昔の中国にあったことから、「豚等のいけにえを供える神聖な所」と、場所を表すという説もあります。

定住することを意味する「住」

この「住」という漢字には、「亻(にんべん)」という偏がありますが、これは人が立っている姿を表しています。そして、旁(つくり=右半分)にあたる「主」は「柱」を意味し、止まったり停止することを意味します。この「住」という字は、人が1ヶ所に立ち止まっていることを意味し、それが「住」という意味になったということです。

古代中国の建築様式を表した「宅」

漢民族の始祖となる古代中国の華夏民族の建築様式は、地面に穴を掘りその穴の中央に柱を立て、さらに梁を渡し屋根を被せる柱梁一体化の構造をしていました。この字「宅」は写実的にそれを表していると言われ、その建物は人が居る場所ではなく、神霊が宿る場所でした。当初は建物を造営することを意味していたものが、後に名詞化し、建物そのものを表すようになっていったと言われています。

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機能性を持った部屋を意味する「室」

「室」と言う漢字を見て思い浮かべるのは、「職員室」や「実験室」さらには「社長室」といった部屋に付けられた名前ではないでしょうか。もともとこの漢字は古代にあった竪穴式の貯蔵倉庫を意味していました。いまでも発酵させたり苗を育てたりする、保温を施した部屋にこの字を当てて「むろ」と呼んでいます。またその他にも暗室、温室、王室、居室、内室、密室という部屋の呼び名にも使われていますが、あらためてそれぞれの漢字を見て判るように、「室」と組み合わせて、部屋になんらかの機能を持たせている特別な部屋を意味しているのです。

腰を据えて祭祀を行う意味の「居」

「居」はどうでしょうか。この字は祖先の霊を祀る祭祀を行う時に、一家の主人が椅子に腰掛けている姿に由来するという説があります。「居」は、腰を落ち着けてじっと居座るという意味で使われていました。「住居」という文字を、そんな意味合いからあらためて見てみると、主人が腰を落ち着かせている場所が「住居」ということになります。

死者の仮安置場所だった「屋」

では「屋」はどうでしょう。これは「尸(し)」と「至」を合わせた字ですが、もともと「尸」には屍(しかばね)の意味があります。古代中国では人が亡くなると死体を葬儀の前に柩に入れて建物に安置していましたが、その建物が「屋」でした。それは板を並べて覆って建てられたもので、「家」にくらべて簡単に建てられた仮屋のようなイメージがあります。

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まとめ

家にまつわる漢字には、古代中国の宗教的由来や意味が込められています。それは古代においては家を建てること自体が宗教的行事と深い関係だったことを物語っています。そんな古代の家づくりに思いを馳せながら、これからの家づくりを考えてみると、新しいアイデアや発見が見つかり、楽しくなるかもしれません。