玄関という言葉は、紀元前6世紀頃の中国の思想家老子の思想をもとに、中国の禅寺で客を迎え入れる入口に、「玄関」と書かれた額を掲げたのが始まりと言われています。そんな歴史的な意味を持つ玄関には、機能別に大きく分けると、開き戸と引き戸があります。さらに開き戸は、外側に開くものと内側に開くものに分かれ、片開き戸と呼ばれるドアのみが開閉するものと、開口を広く取れる親子ドアと呼ばれる両開き戸があります。一般の住宅では片開き戸が多いようです。一方、引き戸の大きな特徴は、開き戸よりも間口が大きく取れることが挙げられます。さらに段差のないバリアフリーにすることも容易なことから、高齢者の移動や車いすを利用する人には便利なドアと言えるでしょう。さらに引き戸の場合だと自動ドアにすることもできます。
家や玄関のイメージを決める玄関ドア
玄関は、家の入口という機能的な面だけでなく、その家を訪れる人が最初に入る、家の顔とも言える大切な空間です。玄関を見れば、そこに住む人の生活スタイルや家に対する愛情も何となくわかるものです。そして玄関に入るときに最初に目に触れる部材と言えば、玄関ドアではないでしょうか。普段あまり気にすることなく開閉している玄関ドアですが、今回は玄関ドアに注目したいと思います。
玄関ドアは開き戸か引き戸
外開きが多い日本の玄関ドア
海外の住宅ではほとんどのドアが内開きで、日本の場合は、ほとんどが外開きとなっています。外開きの場合、玄関内のスペースを有効活用できることや、雨水や外からの埃などが室内に入り込み難いというメリットがあります。狭いスペースを活かす生活スタイルや清潔感への日本人の高い意識から定着したと言えるでしょう。また日本では靴を脱いでから家に上がる習慣があるため、玄関に靴を置くスペースを確保する必要があるということも、外開きが選ばれる理由としては大きいでしょう。
欧米では内開き玄関ドアが選ばれる理由
それではなぜ、欧米では内開きの玄関ドアが選ばれるのでしょうか?まず建物の内と外を完全に分ける欧米では、公共のスペースである外側に玄関ドアが開くことに、心理的抵抗があるということがあります。さらに万が一、人や物に開いたドアがぶつかってトラブルが発生したときに責任問題が発生することや、基本的にドアを開ける時に、お客様を一歩下がらせてしまうことが、欧米流マナーの観点からも失礼に当たるためとも言われています。
主な玄関ドアの素材
アルミ製玄関ドア
機能的な観点から玄関ドアを見てきましたが、次にドアのデザインや素材について考えてみたいと思います。現在の住宅の玄関ドアの素材には、主に4つの素材が使われていますが、近年人気が高まっているのが軽くて耐久性のあるアルミ製です。以前は一見すると、アルミ製とわかるメタルの質感を出したものが多かったのですが、最近では、塗装技術の進歩やシールや天然木などを貼り付けて表面の質感を自在に変えることもできるようになったため、耐久性と質感の性能が向上した製品が、各メーカーから販売されるようになっています。
木製玄関ドア
次に根強い人気があるのが木製です。こちらはもちろん国産もありますが、日本の規格に合わせた外開きの海外からの輸入品もあり、多くの種類の中から選ぶことができます。木製の場合はアルミ製と違い、表面の再塗装やオイルを塗るなどの定期的なメンテナンスが必要な場合もあるため、注意して選んでください。ちなみにアルミ製に天然木を貼り付けた玄関ドアは、メンテナンスがほとんど必要ないとされています。
スチール製玄関ドア
最近は、主に集合住宅などで使用されることが多い鋼板(スチール)製の玄関ドア。一番の特徴は、防火や防音そして防犯性能の高さと言えるでしょう。特に洋風住宅の場合、重厚なイメージがあるため高級な玄関ドアとしての需要があります。ただスチール製の場合は、木製やアルミ製ほどデザインの種類は多くないため、住宅との相性を見ながら検討する必要があります。
樹脂製玄関ドア
樹脂製の玄関ドアは、主に北欧や欧州、韓国などの寒冷地で比較的多く使われている素材です。特徴としては、他の素材と比べて断熱性能が高く、また軽くて加工しやすく腐食に強いことが挙げられます。こだわりのデザイン住宅を建てようとする場合には、候補としても良いかもしれません。
まとめ
家の顔ともいえる玄関。なかでも玄関ドアは玄関のイメージを決定する重要なアイテムです。種類も開き戸にするか引き戸にするか、またドアの材質にもそれぞれ特徴があるため、家づくりやリフォームの際には、住宅の壁の色や外構など全体のイメージに合わせて決めたいものです。住宅展示場のモデルハウスでは、個性的な玄関ドアを見学することができます。はじめての家づくりやリフォームの際には、是非参考にしてください。