畳はもともと平安時代に、貴族の屋敷の板の間の上に敷かれる敷物として用いられるようになったのが始まりとされています。特に中世までは、身分の低いものが板の間に座り、高貴な身分の貴族が上座に敷かれた畳の上に座ることで、権威を象徴的に示すアイテムとして使われていました。その後、畳が一般化したのは江戸時代に入ってからで、この頃には庶民の間にも畳が広まり、現在のように床に敷き詰める形となり、それに伴い畳の形も整っていきました。
家づくりに役立つ畳の特徴~あらためて注目されるその魅力
日本固有の生活文化でもある畳は、日本の気候や風土に最適な床材とされていますが、近年フローリングの普及によって需要が減っています。戸建住宅を建築する場合でも、畳が敷かれた和室を作らないケースも珍しくありません。その一方で、日本文化に関心の高い海外では畳の人気がジワジワと高まり、特に欧米などでは、セレブが自宅の一部に畳を敷いて茶室を設えたり、わざわざ旅館風の和室にリフォームしたりすることもあるそうです。さらにそんな風潮を反映してか、ハリウッドやヨーロッパの映画の中でも、畳が小道具として登場する場面も見かけるようになっています。今回は、日本文化でもある畳について解説します。
平安時代から始まる畳の歴史
知っておきたい畳の部位と役割
畳表(たたみおもて)
畳は様々な部位によってできています。人が触れる表面を「畳表(たたみおもて)」といいますが、ここには、イグサという植物の紐のような細い茎で織って作ったゴザを使用しています。畳表の役割は、このイグサによる保温効果や除湿効果、そして空気の清浄作用などが挙げられます。近年では、耐久性に優れた化学繊維やパルプを使用した畳表を使用するケースも増えています。
畳床(たたみどこ)
「畳床(たたみどこ)」は、畳の中心の芯となる部分で、畳のクッション性や踏み心地、また保温性、断熱性、吸湿性などに大きく関わる部分でもあります。伝統的には乾燥した藁を糸で締めたものを、何層にも重ねて作られていましたが、現在では、主にポリスチレンフォームや木材チップを高温で繊維化したものを板状に仕上げた畳ボードを使用することが一般的になっています。
畳縁(たたみべり)
「畳縁(たたみべり)」は、畳の側面の縁にある布生地の部分で、畳を保護する役割を持つと同時に、無地の畳表に彩りを添え、畳の持つ雰囲気を変えることで、部屋の雰囲気も変えることができます。昔の武士の作法では、この畳縁を踏むことは無礼とされ、その伝統は現代にも受け継がれています。
地域で異なる畳の大きさ
京間(きょうま)
畳の大きさは、伝統的に丈と幅の比率である約2:1を共通とする以外は、地方によって微妙にサイズが違っています。そこに近年になって団地サイズといった新たなサイズも加わり、現在ではサイズ別に4種類に分類されます。中でも代表的なサイズが「京間(きょうま)」です。京間は、京都、関西地方や中国地方、九州地方などで広く用いられ、別名を「本間(ほんま)」ないし「本間間(ほんけんま)」とも呼ばれています。サイズは(191cm×95.5cm)と、4種類の中でもっとも大きいサイズとなります。
中京間(ちゅうきょうま)
「中京間(ちゅうきょうま)」は、主に愛知、岐阜などの中京地区、福島、山形の東北地方、北陸地方の一部、奄美大島など、比較的に日本各地で用いられているサイズです。その大きさは(182cm×91cm)と京間と比べて若干小さくなっており、別名を「三六間(さぶろくま)」とも呼ばれています。
江戸間(えどま)
全国的な標準規格として知られる「江戸間(えどま)」は、主に関東地方や東北地方、北海道などで多く用いられています。別名を「五八間(ごはちま)」や「関東間(かんとうま)」とも呼ばれ、サイズは(176cm×88cm)と中京間によりもさらに小さくなっています。
団地間(だんちま)
戦後になり、主に公団住宅やアパート、マンションなどで用いられるようになったタイプで、サイズは(170cm×85cm)と4種類の中でもっとも小さいサイズです。別名は「五六間(ごろくま)」とも呼ばれています。
日本の気候に合う畳の特徴
保温性・保湿性
減少傾向とは言え、畳の需要が無くなっているわけではありません。それはやはり畳が、日本の気候や風土に適しているためなのです。畳の大きな特徴は、保温性と保湿性になります。5~6㎝はある畳床のおかげで床下の空気を遮断し、保温効果を高めます。また1帖でおよそ500mlの水分を吸収するとされる吸湿能力と調湿機能も見逃せません。梅雨時などは湿気を吸収し、乾燥する冬場は水分を放出して室内を快適な環境に整えてくれるのです。
弾力性とリラックス効果
畳表に使われているイグサは、茎が空気を含み適度な弾力を持っているため。座り心地が良く、フローリングとは違い転倒した時も衝撃を和らげる効果があります。また色合いもナチュラルな優しい淡い自然な緑色で、漂う匂いもリラックス効果を生み出します。また近年の研究によれば、イグサは人体に悪影響を及ぼす二酸化窒素や化学物質を吸着し、室内の空気を浄化する作用があることもわかっています。
吸音・遮音効果
これは意外に思われる人もいるかもしれませんが、畳には吸音と遮音効果もあります。また適度な弾力があるため、人の歩く音や振動も響き難いこともあります。特に2階の部屋などで階下への音を遮断したい場合は、一部に畳の部屋を設けることも効果があると思います。
まとめ
平安時代から続く日本の伝統的な床材である畳。現在はサイズによって大きく4種類に分かれ、主な機能として保温・保湿、弾力性とリラックス効果、吸音・遮音効果があります。日本の気候や風土に合う畳ですが、一部だけでも畳を取り入れたお部屋作りを検討してみてはいかがでしょうか。住宅展示場では、和の空間や和室を設けた個性的なモデルハウスを見学することができます。はじめての家づくりやリフォームの際には、是非参考にしてください。