ここ数年で、食料品や日用品をはじめ、燃料費などの値上がりで、毎月の支出が増えたという人も少なくないでしょう。値上がりの理由としては、「原油価格の高騰」「輸送コスト上昇」「円安による原料費の高騰」などがあげられています。
このことは、住宅費用も例外ではありません。住宅費用が上がっているといわれていますが、その要因についてご紹介していきます。
<住宅費用が上がっている要因>
まずは、住宅費用が上がっている要因には、主に、「建設資材や設備の高騰」「人材不足」「輸送コストの上昇」があります。
◎建材資材や設備の高騰
住宅費用の高騰の主な原因の一つは、住宅建築の際に必要な住宅資材や住宅設備の高騰です。こうした資材や設備の多くは、海外で加工・製造されているものが多く、最近の円安の影響でさらに価格が高くなる傾向があります。また、世界情勢も価格上昇に影響を及ぼします。よく耳にするのは、ロシアのウクライナ侵攻の影響による原油価格の高騰でしょう。
しかし、この原油価格の上昇以外にも住宅費用の高騰の要因があります。例えば、木造住宅の梁や柱に使われている集成材の原料となる「ラミナ(引き板)」を見てみます。日本では欧州産のラミナも用いられますが、これは紅海を経由して運ばれます。紅海は、世界の3割の船が通るといわれていますが、最近の不安定な情勢のため、その多くが迂回ルートである喜望峰経由に変更されています。これにより、日本までの航海日数が紅海ルートより20日程度伸びることになり、燃料費などの増加を理由に追加費用を請求されるケースが増えているのです。
◎人材不足による人件費の高騰
家の建築には大工をはじめ、多くの職人が関わります。最近は、こうした職人の後継者の数が減少し、慢性的な人材不足が続いています。この状況が、人件費高騰の原因となっています。人件費の高騰は、建築費用にも反映されるため、住宅費用高騰の要因の一つといわれています。
◎エネルギー価格の高騰
コロナ禍以降、経済の回復とともにエネルギーの需要が拡大しています。しかし、エネルギーの供給量が拡大しないことから、2021年後半以降、エネルギー価格が高騰しています。その中で、天然ガスや原油産出国であるロシアが2022年2月にウクライナに侵攻したことにより、さらにエネルギー価格が高騰することになりました。
こうしたエネルギー価格の高騰の影響は、住宅設備などの製品価格を上昇させ、住宅費用高騰にもつながっています。
【参考】 令和3年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2022) │ 資源エネルギー庁
◎運送コストの高騰
建築現場に資材を搬入するためのコストはもちろん、原材料を仕入れる際にも運送コストはかかります。運送コストの高騰も、住宅費用を高騰させる要因の一つです。原油価格の高騰に伴うガソリン代の値上げの影響によって、運送コストが上昇しています。
また、2024年4月から始まる運送業の時間外労働の上限規制が、運送コストをさらに高騰させる可能性が出てきています。これは、働き方改革の一環として、運送業のドライバーの残業時間の上限が年間960時間になるものです。ドライバーの人材不足やドライバーの賃金が下がらないようにするために、基本給の上昇などに取り組むことから、さらなる運送コストの高騰が考えられます。
【参考】トラック|適用猶予業種の時間外労働の上限規制 特設サイト|厚生労働省